研究・論文
-
6) Enbo Ma, Tetsuya Ohira, Maiko Fukasawa, Atsushi Shirafuji, Hiromasa Ohira, Michio Shimabukuro(2026).Trends in heart failure prevalence in post-disaster Fukushima residents 2015–2021.Sci Rep. 16:5222.doi.org/10.1038/ s41598-026-36032-0.
震災後の住民における心不全有病率:福島県健康データベース、2015-2021年
概要:2011年3月に福島県で発生した3つの災害後、住民の心血管疾患リスクは依然として高い。本研究は、実際のデータを用いて、震災後の住民における心不全の有病率を明らかにすることを目的としている。2015年から2021年における40歳以上の住民の定期健康診断および診療報酬請求データを適用した。心不全有病率の経時的推移を推定するために、ジョインポイント回帰と年齢-期間-コホート分析を行った。県の標準化有病率および入院率は、それぞれ男性で37.0および7.4/1000人、女性で25.9および5.3/1000人であった。有病率は、浜通りと避難区域(2011年3月の原子力発電所事故により設定。田村市、南相馬市、川俣町、広野町、楢葉町、富岡町、川内村、大熊町、双葉町、浪江町、葛尾町、飯舘村が含まれる)で、県平均より有意に高かった。男性では継続的に増加しており、年平均変化率は0.72%(避難区域)~1.15%(会津)であった(P値<0.05)。男女合計では、年平均変化率は会津でのみ有意であった(0.78%、P =0.021)。年齢-期間-コホート解析では、ネットドリフト(95%信頼区間)は男性で2.50%(1.88-3.13%)、女性で0.76%(-0.17-1.70%)であった。期間効果で調整したコホート率比は、男性では1925~1975年生まれで有意に増加したが、女性では1925~1960年生まれで減少し、1960~1970年生まれで増加した。結果は、心不全の格差は震災後の地域間でみられ、男性と会津で増加した。男女とも、特に中高年層の有病率について引き続き注視していく必要がある。
-
5)Enbo Ma, Tetsuya Ohira, Maiko Fukasawa, Atsushi Shirafuji, Kenta Matsuzaki1, Mitsuaki Hosoya, Seiji Yasumura, Michio Shimabukuro(2025). Predictive value of obesity-related indices for incident type 2 diabetes mellitus: a longitudinal study of the Fukushima Health Database 2015–2021.Diabetol Metab Syndr. 17:236.doi.org/10.1186/s13098-025-01795-5.
肥満関連指標による2型糖尿病発症の予測価値:福島県健康データベース2015-2021の縦断的研究
概要:動脈硬化指数(atherogenic index of plasma: AIP)、心代謝指数(cardiometabolic index: CMI)、脂質蓄積指数(lipid accumulation product: LAP)、インスリン抵抗性代謝スコア(metabolic score for insulin resistance: Mets-IR)、トリグリセリド・グルコース指数(triglyceride-glucose: TyG)および内臓脂肪指数(visceral adiposity index: VAI)など、身体計測値と脂質指標を組み合わせた肥満指標は、心代謝リスクを評価する代替指標として推奨されている。本研究は、これらの指標と2型糖尿病(T2DM)発症リスクとの関連を、大規模な特定健診データを用いて検討することを目的とした。
この後ろ向きコホート研究は、2015年に特定健診を受診し、2021年まで追跡された福島県在住の35~74歳の195,989人を対象とした。多変量Cox回帰分析を用いて各指標とT2DM発症リスクとの関連を検討し、さらに各指標の診断性能を評価した。
平均追跡期間4.61年におけるT2DM累積発症率(10万人年あたり)は、男性で706.6、女性で441.2であった。各指標の最上位四分位群における多変量調整ハザード比は、最下位四分位群と比較して1.33~4.22倍と有意に高かった。受信者動作特性(ROC)曲線下面積(AUC)は、AIP、CMI、LAP、およびVAIで0.821~0.844であったのに対し、Mets-IRおよびTyGでは0.756~0.780であった。再分類改善度(NRI)は、CMIおよびLAPのモデルではAIPと同程度であり、Mets-IR、TyG、およびVAIではAIPより有意に低かった。
肥満指標は、日本人成人における新規T2DM発症と正の関連を示し、特にAIP、CMI、およびLAPは新規発症例の識別に有用であることが示された。 -
4)Maiko Fukasawa, Atsushi Shirafuji, Enbo Ma, Kenta Matsuzaki, Tetsuya Ohira. (2024).
Prevalence, incidence, and recovery of metabolic syndrome after the Fukushima nuclear power
plant disaster: A 10-year longitudinal study. Soc Sci Med. 359:117296. doi:
10.1016/j.socscimed.2024.117296.
福島原子力発電所事故後のメタボリックシンドロームの有病率、発生と回復:10 年間の縦断研究
概要:2011 年 3 月に発生した福島原子力発電所事故後 10 年度分 (2012-2021 年度) の特定健診のデータ(FDB に格納された国保および協会けんぽのデータ)を用いて、原子力発電所周辺の避難地域(12 市町村)と非避難地域(その他の 47 市町村)で、メタボリックシンドロームの有病率、 および、 発生と回復を比較した。先行研究により、 避難地域では原発事故直後(2011-2012 年度)にメタボリックシンドロームが急増したが、この直後の急増の後、2012 年度以降、避難地域での有病率増加のスピードが非避難地域より遅くなっていることが示されている。本研究では、それが、 避難地域でのメタボリックシンドロームの発生速度が落ちたことによるのか、あるいは避難地域でのメタボリックシンドロームの回復率が高いことによるのかを明らかにすることを目的とした。避難地域で発生速度が抑制されているのであれば、避難地域での事故直後の急増には、 事故がなくてもいずれ発生したであろうメタボリックシンドロームが、被災によるストレス等によって前倒しで発生したものが一定数含まれていると考えられる。 発生速度は変わらず、 避難地域で回復率が高いのであれば、事故直後に急増したメタボリックシンドロームは一時的なものであり、比較的回復しやすいということがいえる。 解析の結果、避難地域での発生は非避難地域と比較して抑制されていた。回復傾向はいずれの地域においても見られなかった。よって、避難地域における 2012年度以降のメタボリックシンドローム有病率増加スピードの抑制は、発生が抑制されていることによると考えられた。
-
3 ) Enbo Ma, Tetsuya Ohira, Makoto Miyazaki, Maiko Fukasawa, Masayo Yoshimoto,
Tomonori Suzuki, Ayako Furuyama, Mariko Kataoka, Seiji Yasumura, Mitsuaki Hosoya.
(2024). Prediction of the 4-Year Incidence Risk of Ischemic Stroke in Healthy Japanese Adults:
The Fukushima Health Database. J Atheroscler Thromb. 31(3):259-272. doi: 10.5551/jat.64018.
日本人成人における 4 年間での脳卒中発症予測:福島県版健康データベース
概要:虚血性脳卒中発症のリスクを推定することは、医療従事者が、個人にリスクのある行動の変容を促す際の助けになる。2014-2018 年度の特定健診およびレセプトのデータを用いて、4 年間の脳卒中発症予測モデルを作成した。予測モデルには、年齢、性別、血圧、高血圧の治療、糖尿病、LDL コレステロール、HDL コレステロール、喫煙、歩く速度、1 年間で3kg 以上の体重の変化が含まれた。予測モデルおよび予測モデルから作成したリスクスコアについて、十分な判別力および予測力を有することが確認できた。
-
2)Enbo Ma, Maiko Fukasawa, Tetsuya Ohira, Seiji Yasumura, Tomonori Suzuki, Ayako Furuyama, Mariko Kataoka, Kenta Matsuzaki, Maki Sato, Mitsuaki Hosoya. Lifestyle behaviour patterns in the prevention of type 2 diabetes mellitus: the Fukushima Health Database 2015-2020. (2023). Public Health. 224:98-105. doi: 10.1016/j.puhe.2023.08.026.
2型糖尿病予防における生活習慣のパターン:福島県版健康データベース2015-2020
概要:2015-2020年度の特定健診およびレセプトのデータを用いて、2型糖尿病の発症と関連する生活習慣のパターンを明らかにした。特定健診の生活習慣に関するデータを解析した結果、「食事-喫煙」パターン(喫煙、飲酒、朝食欠食、食べる速度、遅い夕食、間食を含む)と「身体活動-睡眠」パターン(運動習慣、身体活動、歩行速度、十分な睡眠を含む)の2つのパターンが抽出された。それぞれのパターンについて個人のスコアを算出(高得点ほど健康的な生活習慣であることを示す)し、2型糖尿病発症のリスクとの関連を検討したところ、「食事-喫煙」パターンが高いほど(つまり健康的な食事と禁煙)、男性においても女性においても、2型糖尿病発症のリスクが下がることが示された。
-
1)Enbo Ma, Tetsuya Ohira, Maiko Fukasawa, Seiji Yasumura, Makoto Miyazaki, Tomonori Suzuki, Ayako Furuyama, Mariko Kataoka, Mitsuaki Hosoya. (2023). Prevalence trends of metabolic syndrome in residents of post-disaster Fukushima: a longitudinal analysis of Fukushima Health Database 2012 – 2019. Public Health. 217:115-124. doi: 10.1016/j.puhe.2023.01.036.
災害後の福島県住民におけるメタボリックシンドローム有病率の推移:福島県版健康データベース2012-2019を用いた縦断研究
概要:2012-2019年度の特定健診のデータを用いて、メタボリックシンドロームおよびBMI、腹囲、血圧、血糖値、HbA1c、HDLコレステロール、中性脂肪などの健診結果のハイリスク該当者の割合の推移を把握した。福島県では全国と比較し、ほとんどの項目でハイリスク該当者が多いこと、女性では高血圧の割合のみが経時的に減少していることが観察された。県内地域別では、浜通りでハイリスク該当者が多いが、会津でも増加してきていること、2011年の原発事故後に避難区域に指定された地域を含む市町村で該当者が多いことなどを明らかにした。





